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【デザイナーインタビュー】快車肉乾のパッケージデザインに関して

【デザイナーインタビュー】快車肉乾のパッケージデザインに関して

【デザイナーインタビュー】快車肉乾のパッケージデザインに関して

三宅デザインでは昨年、台湾で有名な老舗の肉乾(干した豚肉、ポークジャーキー)のメーカー快車の商品パッケージデザインを担当しました。日本では干し肉といえば、ビーフジャーキーを思い浮かべる人が多いですが、台湾ではポークジャーキーの方がポピュラーです。「快車」はその肉乾のメーカーで知名度も高い老舗です。
今回はパッケージデザインとイラストを担当したWei Chuanにインタビューします。
今Wei Chuanは、台湾の中西部でワーケーションをしていて、出社せずにリモートワークで仕事をしているので、NODOKAと三宅健司が、スカイプでインタビューしました。

1.今回の案件について

NODOKA:お客さんからの要望はどんな内容でしたか?
Wei Chuan:クライアントからの依頼は、「まず、この商品は主力商品なので、今までとは違った見せ方でアピールしたい、パッケージの形に関しても、よくある真四角の普通のものではなくて、変わった形にしたい。ただし台湾ではもう定着している「快車肉乾」の豚のキャラクターはそのまま使いたい。」ということでした。また、印刷は普通の4色のオフセットではなく特殊印刷です。普通の印刷と違うのでデータ作りの上での条件もいろいろありました。
まずは、クライアントの要求を担当営業と話し合い、自分なりに消化します。そして手描きラフでデザインの方向性を提案しました。それをもとにして、また営業を通してクライアントと話し合い、デザインの方向性、また印刷方法なども相談しながら進めていきました。

NODOKA:どうして、新しいパッケージを作る事になったんですか?
Wei Chuan:現状では、この商品は小さい真空パックのものと箱入りのものしかなかったので、大きい真空パックのパッケージを新しく販売しようということになったんです。また、クライアントの社長は「快車肉乾は若々しいイメージ、消費者層も若い世代なので台湾の伝統的なデザインの普通のパッケージよりも、(今の若い人が親しみやすいような)元気で新しいデザインのパッケージの方がより適している!」と考えていたこともあり、変わった形のパッケージにしたいという要望が出てきました。
MIYAKE:そうなんですね。日本人からすると、肉乾というと台湾の伝統的なおやつで、年配の方が主に食べるのかと思われがちですが、そうではないんですよね。若い人も好きなんですよね。

2.デザインとイラストについて

MIYAKE:サムネールを描くとき、もう色のイメージも決めているのですか?
Wei Chuan:鉛筆書きの手描きラフを提案するとき、完璧ではないけどなんとなく色もイメージしていますね。ただし、今回はあらかじめ味が何種類かあることも分かっていたので、味によって色分けをすることも考慮する必要がありました。

MIYAKE:今回は、全体のパッケージの形から考えたんですよね?どうしてこの形に決めたのですか?
Wei Chuan:はい、パッケージの形も、普通でなく若い人にアピールするようにという依頼でした。このシリーズは、木製のカッティングボードをモチーフにしました。最近は、おしゃれなお店ではお皿の代わりに、カッティングボードに料理を載せて提供しているレストランも多いので、それをイメージしました。

MIYAKE:よく見ると、パッケージのキャラクターの服装が違うんですね?
Wei Chuan:麻辣鍋は中華、蜜汁の方は洋風なイメージで、つまり味によってコックの服装を変えました。また、麻辣鍋は辛いのでそれが伝わるような要素もプラスしました。例えば、バックに炎、豚に汗など。

MIYAKE:元々あるキャラクターを使ってデザインすることに関して難しくなかったですか?
Wei Chuan:最初にキャラクターを見たときは、自分自身の普段のデザインテイストと少し違うのでどうやってデザインしようかと少し迷ったけれど、実際やってみるとクライアントの希望もわかりやすかったし、クライアントも自分たちの考えを理解してくれたのでスムーズに進みました。初回の提案でデザインの方向性も大体OKになったので良かったです。

MIYAKE:大よそOKになった後、小さい修正とか結構ありましたよね?どの辺が一番大変でしたか?
Wei Chuan:修正結構ありましたね(笑)。例えば、「もっと全体的に盛沢山にしたい」というリクエストがあって盛沢山にしてみたら今度は盛りすぎだったから減らさないといけない、といったように。初めてのクライアントなので、加減がなかなかわからず、コミュニケーションの部分が一番大変でした。コミュニケーションは「デザイナー↔営業↔クライアント↔印刷業者」という流れで情報が伝達されるので、もしどこかで誤解して伝わると、真意を再度確認して修正するのにまたたくさんの時間がかかってしまって大変ですね。
あとは、ビニール素材だったので袋の色やサイズ、どこが閉じ口になる、ここには文字は入れられない、といった情報も細かく印刷担当者とコミュニケーションをとる必要があったんですよね。そのため快車の案件は約3~6ヶ月と、割と長期間のスケジュールになりました。

MIYAKE:このパッケージはもう実際に店頭で販売されているけど、感想はどうですか?
Wei Chuan:自分でもお店に見に行きました。このメーカーの主力商品だし、店頭の割と目立つところに自分のデザインしたパッケージが並んでいて、とても嬉しかったです!

3.印刷について

NODOKA:このパッケージはビニール素材の印刷ですよね、一般的なオフセットの4色印刷とかなり違うんですよね。
Wei Chuan:もちろん紙に印刷する時よりも、ビニールの印刷の方が制約が多いです。今まで見たことがあるビニール印刷の機械は8色機と10色機だけれども、これらの機械は4色印刷+特色をすべて合わせて8色もしくは10色以内に収めないといけないんです。デザインによっては、私自身は、この箇所は4色の掛け合わせで構わないと思っていても、実際の色の出方を考慮して印刷会社の職人さんから特色を使用するように勧められることもあり、限られた色数の中でどの部分を特色インクを使い、どの部分は4色の掛け合わせでもいいか、という選択がとても難しかったです。

NODOKA:ビニール素材のパッケージをデザインする人にお勧めしたいことはありますか?
Wei Chuan:デザインをする段階でなるべく際に色数についても計画しておくことです。
例えば同系列の色味であれば1色の特色を使って色の濃淡で調整する、文字はなるべく特色を使う、といったように。
印刷会社によって印刷方法もそれぞれ異なるので、印刷の条件によって後から修正しなくて済むよう先にしっかり条件を確認しておいたほうが良いですね。

実際に印刷立ち合いの場でできる色調整は非常に限られています。そのため、色校正(サンプル作成)の段階でなるべく理想的な状態にしておくことが望ましいです。そうしておけば印刷立ち合いの際、それを見本にして色を合わせることができます(紙に出力した色見本は条件が違いすぎるのでビニール印刷の見本にはなりにくいですね)。

NODOKA:印刷の立ち合いをした感想はどうでしたか?
Wei Chuan:10色機は大きな機械が10個並んでいて、ロール式のビニールにすごいスピードで印刷していったところを見ることができました。
立ち合いしたときは、担当してくれた職人さんの技術が非常に優れていて、特色のインクを練ってパントーンの色指定にぴったり合わせてくれたので順調に進みました。

4.アイデアの出し方について

NODOKA: Wei Chuanは普段、イラストや全体デザインのアイデアはすぐ出る方ですか?
Wei Chuan:すぐに出るかどうかは場合にもよるけれど、たくさん資料を見ることでデザインのアイデアを得ていますよ。

NODOKA:デザインのアイデアは、どこから見つけるのですか?
Wei Chuan:
1.まずはネットですね。
・今回は初めて肉乾(ポークジャーキー)のパッケージは、初めてデザインするジャンルだったので、まずは肉乾(ポークジャーキー)メーカー他社のパッケージはどういったものなのか、同業他社のデザインについて調べて、おおまかに理解しました。
・クライアントからの要望の参考になるものを探すこともあります。例えば、お菓子の袋みたいなデザインがいい!という要望があればお菓子の袋を調べて参考にできるものがないか探してみて、そこから方向性を導き出します。
・デザインの方向性が決まった後もネット上のデザインを色々参考にします。フォントやイラストの細部のテイストや配色など、デザイン細部の参考になるものを調べます。

2.周りの人の意見
身の回りにその商品のターゲット層にあたる人物がいれば、その人の意見を聞いてみるのも良いですね。
「もしこういうパッケージの商品があったらどう思う?」等々、消費者の意見が大事ですからね。

3.本屋
本屋には色々な参考にできるものがあるので、本当にたくさんのアイデアを得ることができます!
もし子供用の商品のデザインアイデアが欲しければ、子供用の本のコーナーを見たり、レシピを載せるようなデザインであればレシピの本を見てみる、など。色々なテイストや形式のデザインが見られるのでとても役立ちますね。

ちなみに、今回の快車肉乾の案件では1~3すべて実践しました!

5.イラストの技術的なことについて

MIYAKE: Wei Chuanは、いつもワイヤレスのペン型マウスを使ってイラストを描くんですよね?
Wei Chuan:いつもWacomのタブレットを使っていて、ペンタブをマウス代わりに使っています。使用歴はもう15年くらいなので使い慣れていますからね。私にとってはマウスで作業するよりも、ペンタブの方が楽に扱えます。
それにタッチパッド機能もあるので、デスクトップパソコンでもノートパソコンのタッチパッドと同じように操作ができます。ネットで資料を探すときもとても便利ですよ。
特に今回の快車のデザインはイラストがメインだったのでペンタブの方が線も整いやすくて使いやすかったです。

MIYAKE:今回使ったのはイラストレーターだけですか?
Wei Chuan:はい。今回のイラストはIllustratorだけで描きました。最近のillustratorにはほんの少しだけれどPhotoshopのような機能もあるのでそれも使いました。

MIYAKE: illustratorだけで描くと平面的なイラストになりがちだけれど、このイラストは陰影も自然で立体的だし、いかにもillustratorで描いた様な無機質な感じが無いし、手描きのイラストみたいでパッケージに合ってますね。凄いですね!

MIYAKE: illustratorを使ってイラストを描くときに気を付けていることはありますか?
Wei Chuan:色や立体感。2Dのイラストをリアルに見せるたいときには特にこれらを意識しています。今回の快車肉乾のパッケージはイラストが目立つデザインなので平面的にならないよう気を付けました。

MIYAKE, NODOKA:—– Wei Chuan、ありがとうございました。

このパッケージシリーズはWei Chuanとダリアが手分けして、担当しました。
快車の肉乾にはポークジャーキー以外にもビーフジャーキーもあります。ビーフジャーキーのパッケージもWei Chuanが担当して、リニューアルしました。また今度紹介しますね。
皆さん、店頭で見かけたら、買ってくださいね。ポークもビーフも美味しいですよ。
ネットでも買えますよ。よろしくお願いします。

快車肉乾/肉紙 官方網站www.kuaiche.com.tw/

私たち三宅デザインは、日本と台湾で培った経験を元に、平面デザイン、ウェブデザインを通して、クライアントの悩みを解決しています。どうぞご相談ください。

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記事を書いた人

MIYAKE KENJI 三宅デザイン代表、デザイナー。

個人ブログ◆三宅健司の音楽日記 (ja)

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